セットプレー、パワープレーも駆使。azzurroの挑戦（５）

◆ベンチで声を出し続けた理由

　指導のコンセプトは一言で言うと「チャレンジ」だと言う。クラブ生募集のチラシには「子ども達に"答え"を導く教育とチャレンジする気持ちを！」と謳われている。現在クラブ生は小学生が約100名、中学生が40名くらい。「礼儀作法は当然で、それがあってこそのチャレンジ」だと言う。ベンチではいつも静かな中尾氏。判断するのは子ども。例えばゲーム中に『今、そこでシュートしろ～』と声を出す気持ちもわからないが、そうなってくると子どもの判断ではなく、監督の指示次第になってしまいかねない。子どもの発想や判断が消えてしまいかねない。最終は子どもが良い判断をすることが大事で、そのためには失敗しようが何しようが「子どもたちのプレーを黙ってみている」と言う。その分、練習でしっかり言って、伝える。「試合は練習でやってきたことを発揮する場、そこであ～だこ～だ言っても仕方がない」という潔い考えだ。

　「ただ今回のバーモントではずっとベンチで声を出し続けていた」と言う。

　夏に主催したazzurro FESTAで、静岡のライバルチームとの対戦時にこういう出来事があった。azzurroのジュニアユースはハイプレスを売りにしていて、バチンとぶつかり合うことも多かった。審判のジャッジもあいまいになっていく中で、相手の監督が審判に強く「ケガするじゃないか！どうなってるんだ！」と大きな声を上げた。会場の空気がピーンと張り詰めた。何よりazzurroの子どもたちが一瞬、萎縮をしてしまった。その後、1点を失ったazzurroは立て直しも利かず、試合も敗れてしまう。ひとつの声で流れが変わる。審判に言うかどうかはともかく、試合の流れの中で、ここぞというタイミングで、締めたり、チームを勢いづかせる声をあげる重要性をその時に感じた。
　だからバーモントカップ中は、ずっと声をかけ続けて、チームに対して「強くプレス！」やジャッジに対して、「マイボール！」と審判に伝えて空気を作っていったと言う。
もちろん文句を言うのではなく、審判や相手チームへのリスペクト精神は忘れてはいない。
　子どもたちも『監督、いつも試合中はあまり喋らないのに今日は違う。本気なんや。僕たちも本気で勝ちにいかなアカン』と思ったと言う。

◆年で変わる戦術。セットプレー、パワープレーも駆使

　azzurroジュニアのスタイル、戦い方は年々変えている。その年代の特徴を考えて、戦い方を考える。２年前は大きな選手が居たのでピヴォ当て。今年は平均的な感じだったので、Y型の守備、前プレがメインテーマだった。攻撃に関してもエイトなども使わず、シンプルに裏を取らせた。去年はこだわっていたパス回しも、今年はこだわらなかった。
　４年生になると、練習や試合、遠征で色んな戦い方をしているので、年によって戦い方を変えても子どもたちは戸惑わないと言う。セットプレーも４年生から始める。４年生では絶対覚えきれないが、そこでやっているからこそ、５年生、６年生でできるようになっていく。「フットサルでセットプレーは必要」と断言する中尾氏。今年はコーナーで５個、キックインで６個、キックオフで２個、フリーキック３個、クリアランス４個。小学生にはかなり多い数だ。そういうことを座学などでやっていくと言う。
　セットプレーには「１つの形にバリエーション、選択肢を持たせることが大事」だとも言う。「決まった形しかできないなんて、あり得ない。相手の守り方や状況に応じて、プレーを選択する。パワープレーも練習からやっている」と言う。azzurroジュニアのフットサルIQは相当高い。

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レポート・写真：北谷仁治