W杯へ向けた、代表候補合宿２日目午前トレーニングレポート

９/25(火)、テバ・オーシャンアリーナ(愛知県)で行われた、フットサル日本代表候補トレーニングキャンプ２日目・午前練習。稲葉は別メニューながら、カズはフルメニューをこなした。

09:44からストレッチ。09:54から「サークル鬼」。鬼はサークルの中。センターサークル上に６つのマーカー。横移動しながら、マーカーの後ろに２人並ぶ。１人や３人になると、鬼にタッチされてしまう。移動中もタッチされる。状況(特に後ろ)判断が求められる鬼ごっこ。これも(アジア選手権前)チチョがやっていた。途中から黄色のマーカーも置かれ、「黄」は１人だけ並ぶというルール。カズも容赦なくタッチされ、鬼となっていたが、終盤は、後ろに並んでいた滝田にビブス(鬼役)を(無言で)渡す場面も。

10:02から全面でランダムにパスを回す。カズはまだ名前を覚えていないようで名前でなく「ハイ！」と呼んでパスを出していた。

10:05から２組に分かれて、５対３。最初は、３タッチ以内。９本以内に(パスを回す)陣地を変える。鬼(３人)は１回目のカットはパスを１本回すだけでOK。２回目のカットは３本パスを回せば３人全員が鬼から解放される。ミゲルの特徴でもある、頭を使うトレーニング。
途中から、「ハーフを超えるパスは、苦手な足で浮き球のみ」とルール追加。さらに「２タッチ以内。ハーフを超えるパスは、苦手な足でグラウンダーのみ」と変更。さらに「ハーフを超えるパスは、ダイレクトパスだけ」。さらに「苦手な足はタッチ制限なし。得意な足はダイレクト。ハーフを超えるのはドリブルだけ」と条件を変えながら行われた。10:19、水(休憩)が入る。この日は水休憩が"こまめ"だ。

10:20からシュート練習＆キーパーのアップ。左右から連続でシュートを打つことが求められる。「上と下打ち分けよう」前の選手が上に打てば、次は下。下を打てば、２本目は上。途中から、「１対１を仕掛けよう」。と、１対１からのシュートに。カズは得意のシザースで抜きにかかるが、面をつくって対応する守護神・川原らの壁を通せない。しかし(こぼれ球ながら)最後には、キーパーの肩口をループで抜き、シュートを決めた。おそらくはまだ誰からもヒントを貰っていないだろうが、フットサルの"狙いどころ"を射抜いた。「ボクはストライカーじゃない」練習後の会見ではおどけていたが、やはり天性の得点感覚が備わっているのかもしれない。

10:27から、いよいよ３分の２のコートながら、ゲーム形式で「ディフェンス」をテーマにゲーム。テーマは「ハーフラインからの押し上げ」。明日は「前から(プレス)」とのこと。攻撃がキーパーからのスローを受けてスタート。１点取ったら、１球追加で、５球(５回攻撃のチャンスがある)交代。５球目に攻撃側が得点を奪うと、最初から(５球)やり直し。
　ディフェンスは「ゆるいパスのとき、背中を向けてコントロールしたとき、バランスを崩すパスなどのタイミングでラインを押し上げること」これまで言い続けられてきたことだが、カズと森岡のためか、改めて、ゆっくり、説明が行われていた。
　「マークはボールにプレッシャーがかかっている時のみ受け渡す。自分のマークが抜けて行って、次のマークが視野の前に居るときなどに。それ以外はマンツーでついていく。押し上げたらゾーン。攻撃は４－０、３－１、バリエーションを入れながら」という指示でスタート。
　
　最初の守備は緑で、カズ、森岡、北原、小宮山のセット。いきなり、森岡・カズが同じセットで登場だ。攻撃は白で、村上、木暮、星、逸見ラファエル。

　カズに関して言えば「スイッチを入れてきた」という印象で、ゲームになるとプレースピードが一気に上がった。しかも45歳にしてクィックネスがすごい。逸見ラファエルの深い切り返しにも外されない。キックインから、星にキュッと内に切り込まれた瞬間にシュートを放たれたシーンが１つあったが(おそらくカズ以外でも外されていただろう…)、ディフェンスで「振り切られた」場面は、これ以外に無かった。これはひょっとしたら、ひょっとするのかもしれない。
　しかし組織的なディフェンスで言えば、やはり厳しい。テーマからは、ハーフでしっかり引いてからディフェンスをスタートすべきところを、ひとり最初から前に寄ってしまったり、サイドに出てもボールラインより前にポジションを取ったままなので、間のパスやピヴォへのコースが簡単に空いてしまう。マーク交換に関しては、(小宮山や北原のコーチングもあり)時間を追うに連れて、形になっていたが、ブラジルやポルトガルを相手に、小宮山や北原がカバーしきれるか？そう考えると、現実問題として、ブラジル戦、ポルトガル戦のカズの出場は(現時点では)なしか、あっても、かなり時間や状況が限られてくるのでは？と思う。
　
　個人的に心配なのは攻撃時の方。判断が遅くパスに詰まるシーンが多かったし、もらい手としても、タイミングや場所が合わない。もちろん、連携を高めるのはこれから…なのだが、フットサルの動きのベースがないだけに、「厳しいチャレンジになる」のは間違いなさそう。それでもダイレクトパスや出したあとの抜ける動きはさすがに素晴らしく、終盤にはローテーション(前に抜けたら、次は後ろに降りる)動きも自然と出来ていたし、そのためのステップワークを確認する場面も見受けられた。ミゲル監督の言うように「吸収力は高い」ようで、可能性は感じさせてくれた。
　
　
　ゲーム中、全体に向けてミゲルから飛んだ指示は「ハーフで辛抱強く待とう」テーマはハーフからの押し上げ。ラインを押し上げるタイミングは前述のとおりだ。
　「背中を向けてコントロールしたなら、全員で(ラインを)上げよう」ラインを上げるべきタイミングで、押し上げられなかったシーンで。
　
　攻撃は「パスを出したら抜けて前に入るか、後ろ(のサポート)に降りて、前の選手が中に入ってきてあげよう」ディフェンスに押し込まれ、出した後の動きがなく、「全部ディフェンスを助ける動きになっちゃってるよ」と指摘。
　
　仁部屋がサイドでボールを持った時に、滝田に「前のスペースを空けよう」。ドリブルが得意な仁部屋にスペースを与えるためだ。中央に高橋が居て「かぶるので」と言う滝田に対し、「なら中央を降りればいい」。
　
　「プレスがかかっていなかったらマンツー。迷わなくていい」
　
　
　さて、カズ・森岡を含む緑セットが攻撃に回ると…、カズがずっとピヴォの位置で、森岡は後ろの３枚に入って、パスを回す形に。『これでは、せっかくの森岡が活きない』と思っていたら、ミゲルがカズに「３－１のまま、ずっと(前に)止まっているのではなく、時には降りて、後ろ(のパス回し)に加わるように」という指示が。カズが抜ければ森岡がピヴォに入れる。森岡が降りた時に、またカズがピヴォに入ればいい。この形が、ミゲルが考えている"カズ起用法"のひとつなのかもしれない。
　ただしミゲルの頭には「いまの日本は４－０の方が合う」という印象があるようで、前に張り続けた星に対しても「相手の一列目がアグレッシブなディフェンスに来ているなら、まずサイドに落ちよう(降りよう)。相手がブラジルなら、潰されて終わりだよ」とコーチング。４－０で、４人が近い位置に居ながらパスを回しながら、タイミングを見て森岡や星がピヴォで受ける形が、いまミゲルが描いている日本の理想の攻撃の形なのかもしれない。
　
　途中からは交代際に、コーナー・キックインのセットプレーも入った。「往復ロベージェ」(ロベージェはスペインの強豪フットサルクラブの名前)と、また「往復」のオプションも増えたようで、「往復ロベージェ」「後ろ２」「ライン０、１、２」「往復」「ななめ１」「前２の１」「横３」「コーナーの後ろ２」などの形が、(いつもよりゆっくり)確認された。カズはセットプレーのシューターに使われるのでは？との個人的な予測があったが、緑セットでは森岡が基本シューター。カズは一番簡単な動きのところに入っていた。
　
　記者が把握する限りでは、コーナーではこの他に「外３」「ななめ０、２」。キックインでは「ボール頂点」「L型」が残っている。
　
　森岡のシュートは残念ながらこの日は枠を捉えず。これはまだまだセットプレーを覚える(頭を使っている)初期症状とみたい。きちっとポジショニングと動きを覚えて、頭が解放され、シュートに集中できれば、持ち前の豪快なシュートがブラジル、ポルトガル、リビアのゴールに襲いかかるハズだ。

※写真は後日。

※午後練習レポートはありません。仕事のため、取材できず。３日目はまた取材・レポートを行います！

レポート：北谷仁治