２/14(月)～16(水) 静岡・代表候補合宿レポート最終回

２/14(月)～16(水)、静岡県のエコパアリーナで行われたフットサル日本代表候補合宿後、ミゲル・ロドリゴフットサル日本代表監督へのインタビューです。

タイムズ「今回の合宿の課題とテーマは？」
ミゲル監督「これまでも一緒で、目的を意地しているところです。もっと輪を高めて、お互いを知って、よりコンセプトの実現を自動化していく。特に戦術のところではハーフからのディフェンス。前は高いところからのプレッシングの精度を高めていました。あとはピヴォを使ったトレーニングを入れていってるのと、細かいところ、ディテールですね。試合を想定したディテールの部分。攻撃、守備、両方です。試合の流れを読んで、どういう判断をしていくか」

タイムズ「ディテールの部分で言えば、ひとつ、最後の話の中でも"国際的な試合ではやってはいけないミス"という話がありました。具体的にどういうプレーのことでしょう？」
ミゲル監督「トレーニングの中で、失点してしまったシーンです。それも明らかに避けることができたもの。例えば攻撃側が見事なドリブルでかわして決めましたというのであれば仕方ありません。それが少し体の向きやポジショニングをずらせば防ぐことができたとか、そういった細かいところです。あとはカバーリングの位置・距離。ちょうどいいボールへの距離感。そういったディティールです。当たり前のことなのですが、そこの部分の違いがまだゴール(失点)につながってしまっているというのが多々あります。攻撃も一緒です。動きのスピード感。いつ早くするのか。いつゆっくりするのか。いつスピードを変化させるのか。体の向きをどうするのか。こういう本当に原理原則的なところですが、ディティールの部分です」

タイムズ「前回(去年)のスペイン遠征では、セットプレーの良さなどが(スペインで)評価されたとコメントされていましたが、今回の遠征では、どういった日本の良さを見てもらえそうですか？」
ミゲル監督「攻撃です。攻撃全般。ピヴォを使ったプレーから、フィニッシュの部分まで。守備の部分は、さきほど言ったディティールの部分以外はみんな、やることがわかってきているので。荒削りで、攻撃に関してはまだまだ修正の部分はありますが･･･。あとは、フィジカルです。筋力的なところを強化しなければいけません。そこはクラブでの努力ということになるかと思います。攻撃とフィジカル。その２つの部分に大きな伸び幅を期待しています」

タイムズ「少しスペインが何故フットサルに強いか？を改めてお聞きしたいのですが･･･。何か強くなるキッカケみたいなものはあったのでしょうか？」
ミゲル監督「子どものころからプレーをしているから、ということだと思います。それがどうして始まったかと言えば、学校で始まっていったことが大きいと思います。本当に(日本の)小学校で野球をやっているかはわかりませんが、小学生の間で、野球くらいの根付き方をしてから"変わっていった"というのはあります。そして十年間ほど経った今、６才ぐらいからずっとフットサルをやっていたという人たちが指導者になってきています」

タイムズ「学校でフットサルが始まったと言うのは、授業ですか？学校のクラブですか？」
ミゲル監督「授業でもやります。バスケット、バレー、陸上、体操などの授業と同様に、フットサルの授業があります」

タイムズ「サッカーでなく、フットサル？」
ミゲル監督「フットサルです」
小森コーチ補足「向こう(スペイン)は学校にグランドが無いんですよね。日本の校庭みたいに。体育館じゃなくてもフットサルサイズぐらいのプレイグランドはあって、そこでやるんです」
ミゲル監督「フットサル、ハンドボール、バレー、バスケ。その４つが特に球技系では主要体育課目です」

タイムズ「世界選手権でブラジルが強い時代がありました。"個で強いブラジル"というイメージがあって、それに対しスペインは戦術の部分を強化してブラジルを倒そうという流れがあったと聞いてます。まず、その認識はあってますでしょうか？」
ミゲル監督「間違いないです。もちろん素晴らしいタレントはスペインにも居ますが、ブラジルのようにタレントの集合体というまでは行きません。そこで、何よりも戦術的な部分の成長、指導者の成長という考えができました。その流れを始めたのはハビエル・ロサーノです。指導者のリフレッシュ講習ですとか、海外からの情報を取り入れだとか、色んなことを動かしていきました。大学の体育学科卒の人たちがみんなフットサルに注目し、流れてきました。そういう人たちはインテリ層であり、科学的な側面も使って、フットサルを捉えて行くようになりました」

タイムズ「スペインではクラブの監督が集まってミーティングしたり、指導者の学校があると聞きました。それはその流れの中でできたのでしょうか？もっとそれ以前からあったのでしょうか？」
ミゲル監督「昔からありました。自分が始めたころからクリニックや講習会はありました。私が指導者講習などに行き始めたのは少なくとも15年前になります。そういうものが整備されてきたのは、15～20年前の間だと思います。市や企業が用意したり、公共のスポーツ団体が用意したり、協会が用意したり、色んなパターンで指導者の講習会が開催されました」

タイムズ「"戦術を強化していこう"という話はわかりましたが、スペインでは、"個の強化"については、どのように考えられているのでしょう？例えば、戦術を優先していると、プレーの中で、ドリブルよりパスが優先されると思います。そうするとドリブルの機会が減り、ドリブルの練習量も減ることになり、個の部分は弱くなってしまうのではないでしょうか？」
ミゲル監督「一般的なところ、全体がこうです。とは言いにくいところがあります。いつも白・黒とは行きません。日本でも色んなコンセプトの指導者が居るのと同じです。

　スペインでは･･･という言い方はできませんが･･･、ただ自分はこう思っているというのと、多くの意識のあるスペインの指導者が考えていると思われるのは、個のタレントと言うのは戦術機なところ、システム的なところと相克しない。システムの中で個のタレントを活かすという考え方の優先順位があるだけということです。

　極端な話をすれば、ブラジルでは個のタレントが全体のやり方をぶち壊しても通用すれば、それを認める。という考え方をするのに対して、そうではなく、スペインでは流れの中で個のタレントを如何に出せるのかに自由を与えるという考え方です。
　それをどうやって育てていくかと言えば、子どものころに色んなことにチャレンジするのを妨げない。システムを言う必要も知っている必要も無い時代に自由を与えておくことです。もちろんその時代から「お前、そんなプレーをするな」という人も居るかもしれませんが、それはおそらく日本でも同じことだと思います。

　スペインスタイルと言うのは、個のタレントに制限を与えるのではなく、発揮の仕方・方向を整えてあげると言う考えです。システムという形の中に入れてあげて、方向付けしてあげる。

　例えば個のタレントと言うときに皆さんが想像されるのは１対１のシチュエーションで、どれだけ色んなことをやって相手をかわせるかだと思います。どの形・状況でもやれるから、それをやっていきましょう(個で突破しちゃおう)というのがブラジルだとすれば、いつ、どこで、どんな風にすることが正しいのかを教えてあげるのがスペインです。

　確かにスペインでもそういった指摘が実際にインターネットで出回ったりもします。スペインでは個のタレントが「この人！」というのが出てくるのが少ないのではないか？と･･･。そういう意味では、おっしゃっている感覚・作用があるのかもしれません。もっと混沌とした状況を認めている中からこそ、ブラジルのようなタレントが出てくるのかもしれません。それに対し(プレーの)"制限がかかっている状態"というのがスペインにはあるかもしれません。実際、スペインでも活躍しているブリリアントな(輝かしい)選手はブラジル人ですから。スペイン発のそういうタレントが少ないという指摘はあります。
　ただこれまで起きてなかったことは、いま得点ランキングの１位・２位がスペイン人なこと。ナノ・モドレゴと、ナノ・リンですが、今まではそういうことがありませんでした」

ミゲル監督の理論については、ミゲル・ロドリゴ日本代表監督の「戦術本」が発売されていますので、こちらもぜひご購読ください！(^^)/

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レポート：北谷仁治

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