頂上決戦は“昇格組”の大和撫子に軍配/静岡県１部４節

Hero Futsal Club × 大和撫子/VIORA藤枝／静岡県フットサルリーグ 2009１部第４節
2009年８月22日（土）静岡・エコパアリーナ
写真・レポート：橋爪充

　静岡県リーグで、昨季まで３年連続２位。Hero Futsal Club（以下、Hero）の選手、監督、関係者は皆、「今年こそ優勝＝東海リーグ昇格」という強い思いを抱いている。今節の相手は大和撫子/VIORA藤枝（以下、大和撫子）。今季１部昇格したばかりだが、３節を終えて２勝１分けとしており、勢いを感じさせるゲームが続いている。Heroにとっては「立ちふさがる壁」というよりも、ミッションを成し遂げるための「目の上のたんこぶ」的な存在だろう。現時点での１、２位対決は、今年の優勝戦線を占う戦いとなった。

　この「大一番」に、運命の神様は皮肉な演出を施した。チームの大黒柱であるHero7.内藤修弘、大和撫子4．野木武臣が前節でそろって警告を食らい、今節は出場停止となった。絶対的なフィクソであり、チームの得点源でもある両雄の不在が、勝敗にどんな影響を与えるか。

　試合は開始早々に動いた。１分、大和撫子はゴレイロから相手陣左カドにロングフィード。これを5．向島雅之が胸トラップひとつで相手ディフェンスを置き去りにし、右足を振り抜く。見事な先制ゴールで大和撫子が先制した。

　勢いづく大和撫子は、６人のFPを短いスパンでどんどんローテーションさせ、試合の主導権を握る。Heroは８分、怪我で万全ではない10．井出健身、8．石上剛也を投入。本来なら、もう少し後の時間帯に使いたかったであろう主力２人を、かなり早い時間に登場させ、戦局の打開を図る。

　だが大和撫子は委細構わずプレッシングを強め、15分に追加点。８番・鈴木修平のシュートをHeroゴレイロ21.中森政孝がナイスセーブ。しかしこのこぼれがHero11.阿野光平の足元に転がってしまった。これを阿野が冷静に蹴り込み、前半はこのまま２対０でタイムアップ。大和撫子16、Hero５というシュート数の差が、そのままゲーム内容を表していた。

　全体にコンディションが悪く、動きが重いHero。前線に決定的なパスを出す内藤がいないため、チャンスそのものが作れない。一方の大和撫子は、「野木なしでの崩し方を１カ月半、ずっとやってきた」（向島）という意図がズバリはまった前半だった。

　後半も大和撫子ペースは変わらない。ハードヒットな守備から、切り替えの早い攻撃で、何度もHeroゴールを脅かす。先手を取って相手を引き出し、カウンターを確実に決めて加点、という大和撫子の得意なかたちになりつつあるゲーム展開。25分、前線のプレスから7．石上直樹が追加点。これで３対０。これ以上の点差はつけられたくないHeroは、ゴレイロ中森をハーフウエーラインまで上げてパワープレーに突入する。

　次の１点が勝負を決める。そうした緊迫感が漂う中、Heroは慎重にボールを回す。ゴレイロ中森がかなりワイドに開いて相手ディフェンスをつり出そうとする。徐々に下がりだす大和撫子のライン。だが34分、左で得たHeroのCKが痛恨のミスキックとなる。ボールカットした大和撫子・向島が丁寧にインサイドでロングシュート。これで勝負あり。試合はその後も向島が立て続けに２点を決め、６対０で終了した。

　優勝への意欲が問われたこの一戦。思わぬ大差に「びっくりしています」と向島は話す。「早い段階で点を取れ、自信を持ってプレーできた」ことで、Heroのミスを的確に突く大和撫子らしい展開に持ち込んだ。これで勝ち点10。Heroを勝ち点１上回り、首位に躍り出た。「ウチはまだまだ荒削り。でもそこがウリだから」（向島）。ラスト３試合、この勢いを持続させて、県１部を１年で通過できるだろうか。

　一方のHeroにとってこの負けは大きい。自力優勝がなくなった。井出は「選手一人一人の気持ち、ポテンシャル、すべて相手が上」と完敗を認めた。前半をロースコアで終え、得意のパスでペースをつかみたかったが、大切なところでミスが出た。井出を含めた主力のコンディションの悪さもたたった。「あと３試合。相手の結果が気になりますが、とにかく勝っていくしかない」（井出）。

　昨季は最終節の直接対決を前に痛恨の引き分けを喫し、ライバルである焼津フットサル倶楽部の優勝を“アシスト”したHero。何があるか分からないリーグ戦だけに、Heroにとって今年は逆の目が出ないとも限らない。最終節は来年２月14日。まだまだシーズンは終わっていない。

●大和撫子/VIORA藤枝 6-0Hero Futsal Club
1分　向島雅之（大和撫子） 1-0
15分　阿野光平（大和撫子） 2-0
25分　石上直樹（大和撫子） 3-0
34分　向島雅之（大和撫子） 4-0
38分　向島雅之（大和撫子） 5-0
39分　向島雅之（大和撫子） 6-0

この日４ゴールの大和撫子・向島（中央5．）。野木がいない中でキャプテンを務め、重責を全うした

大和撫子はパワープレーにも粘り強く対応。Heroゴレイロ中森にしつこくアプローチする8.鈴木

シュートを放つHero19．櫻井淳也。チームシュート数トータル14は少しさびしい数字か

●その他の試合結果
【1部】
LOCO☆ 8-1 INTERIOR‐S‐FUT
セレゾン浜松FC 4-2 テレポケット/DOPPO
[sli:k]スリーク 5-2 F.S.C./PROVA清水フットサルコート
【２部】
BEN FC 5-4 豊友
ARTISTA 3-1 SOLA MAGIA
FAMILLE FC 2-1 Obra-Prima
イカイフットサル 2-2 AS PRACA

こちらも４ゴールと大爆発のセレゾン浜松・大場史人（中央）。今季７ゴールと好調を維持している

この日は引き分けに終わったイカイフットサル。板山尚史（中央15．）の勝ち越しゴールを勝利に結び付けられなかった。４節を終えて１敗１分けだが、混戦模様の２部だけにまだまだチャンスはある