怒りのゲーム/Fリーグ名古屋×府中戦レポート

　府中がまたも名古屋相手に善戦。１－１の引き分けに持ち込んだ。

同点ゴールに湧く府中ベンチ。温かいサポータに見守られる中、チームの２年越しの思いを王者にぶつけた

　名古屋は５分、府中６.難波田のキックインを拾って、18.シジネイが無人のゴールに流し込んだゴールが取り消され、ノーゴール。試合後の記者会見で、「いつまでひどいジャッジングが続いて、何も状況が変わらないのか！」とアジウが激昂する結果となった。

　問題のシーンは名古屋のベンチ前のキックインで起こった。難波田のキックインが力なくピッチ内に転がる。府中ゴレイロ15.石井も難波田のバックパスを受けるべく前に出ていたので、ゴールはがら空きだった。このボールを拾った18.シジネイが無人のゴールにロングシュートを流し込んだ。

　しかしキックインをした難波田はキックインの際に邪魔があったと猛抗議。傍目(はため)からは、アジウ監督が邪魔をしたような状況に見えた。場内もそう思った人が多かったのではないだろうか。ただでさえ強すぎて"ヒール役"に回ることが多い名古屋が、このゴールで今日も"完全悪役"となってしまった。このシーンで実際何が起こったかは後ほど･･･。

　審判団の協議の結果、名古屋のこのゴールはたいへん珍しいことに、"取り消し"となった―。

　試合の立ち上がりに戻ると、序盤はどちらかというと府中が押し込む展開だった。名古屋ボールも回るが、自陣でのボール回しが多い。そして名古屋の縦パスをインターセプトしてチャンスをつくっていたのが府中８.皆本だ。持ち込んだボールをシュートして欲しい場面もあったが、フィクソでなくアラの皆本が鋭い読みで、高い位置でパスカットをすることで、府中の大きなチャンスになっていた。

　５分の"取り消し"ゴールを経て、試合は一気に熱を帯びてくる。７分、名古屋９.森岡がシュートまで行った後、ピッチに倒れたところにディフェンダーについていた府中５.鳩野が覆いかぶさるように、吠え、敵対心を剥き出しに。

　それでも先制は名古屋だった。11分、９.森岡がキレイに右サイド、ななめ前にパスを出すと、受けた４.ラファエルサカイがコントロールして、シュート。これが決まって、１－０。

　名古屋は13分、ゴレイロの21.川原が、府中ゴレイロ15.石井が前に出ているのを見て、ロングシュートを狙い、あわや！の場面をつくる。

　前半は１－０。名古屋リードで折り返す。

　後半、府中は12.小山が攻撃によく絡むもシュートの精度が低く、ゴールには至らず。徐々に名古屋がパスを回して押し込む展開となっていく。名古屋は激しくないがジワリ、ジワリと寄せる前プレが効果的。府中７.上澤がそれをかいくぐって前線にピンポイントのパスを送る場面も、10.永島のシュートは枠を捉えず。

　14分、府中は３.森、10.永島らが連続シュートに行くも、名古屋ゴレイロ21.川原が文字通り「壁」となって、ゴールを守っていた。しかし･･･。

　同分、フリーキックを得た府中は、横に流したボールを８.皆本がダイレクトシュート。これが見事に決まって、１－１の同点に。

　この後、名古屋はまたエンジンのかかった猛攻に出るが、府中はまたもゴレイロ15.石井が踏ん張って、名古屋に追加点を与えない。35分、府中９.宮田が倒れた後、足でボールをかかえこんだところを、いつもは冷静な名古屋３.北原が後ろから２度、３度と尻を蹴る珍しい場面も。

　37分、名古屋は縦パスを、うまくディフェンダーをブロックしならがトラップした10.木暮がシュートまで行くが、これも府中ゴレイロ15.石井が閉じた足に跳ね返される。

　38分、タイムアウトを取った名古屋は15.前田をゴレイロに入れてパワープレー開始。勝点３を必死に取りに行く。対する府中も裏をついて15.石井、８.皆本らが無人のゴールを狙うがゴールはならず。試合は１－１のままタイムアップ。王者・名古屋が引き分けスタートとなった。

　問題のシーンの事実関係はわからない。ただ色んな人の話を照合すると、前に出ようとするアジウを押さえる第３審判の下がった足が、蹴る難波田の足に当たったようだ。ルール上、審判は"石"と同じとされているが、この状況とアウト・オブ・プレーだったことで"正常にプレーが再開されていない"として、得点の取り消しとなったようだ。アジウ監督は、記者会見で審判の重大ミスのように攻め立てたが、個人的にはこの判断は審判団のファインプレーだったのではないかと思う。

　しかし問題のシーンを除いても、名古屋の攻撃は迫力のあるものではなかった。名古屋３.北原が「今日はウチのセットが悪過ぎた」とコメントしたとおり、18.シジネイや12.ウィルソンが決定的な仕事ができなかったことがその大きな要因に思える。しかし、頼みの綱の外国人が不調だと、得点力がガクリと落ちるようでは心もとない。パワープレーも最後にシュートを打つ選手が(シジネイに)決まっているかのようで、府中もある意味守りやすかったのではないか？
　ゲームの中でも、シジネイ、森岡、ブルノら個の強い選手の仕掛けが"止まった状態から"のものが多かった。果たして、ムービングフットサルに面白みを感じているフットサルファンの琴線に触れただろうか･･･。

　名古屋のアジウ監督が会見でいくら吠えても、メディア陣の中にも同情する空気が感じられなかったのには、「名古屋ならもっと面白いフットサルができる」「もっと面白いフットサルを見せて欲しい」という欲求が満たされないからのような気がしてならなかった･･･。