出遅れたままの花巻/オーシャンアリーナカップレポート

Fリーグ大洋薬品オーシャンアリーナカップ 2009・１回戦ステラミーゴいわて花巻×府中アスレティックFC

日時：2009年８月６日(木)
会場：大洋薬品オーシャンアリーナ

まずは花巻に完勝した府中。上澤の存在感は圧倒的

今季も厳しいシーズンを迎えてしまいそうな花巻。選手の奮起に期待がかかる

　今季からFリーグに参入する府中が、上澤のゴールを皮切りに７得点をあげ、花巻に完勝した。

　府中は落ち着きのある立ち上がり。開始わずか48秒。左サイド、またいでから、縦にディフェンダーをかわした７.上澤がそのままシュートも決めて、府中が先制。上澤が"個"の力で、あっさりゴールを奪ってしまった。上澤はこの後も、名古屋では見せる機会の無かった個人技、仕掛ける力、キープ力を存分に見せつけ、"府中に上澤あり"を強烈に印象付けた。

　先制ゴールで楽になったか？府中は前プレも効き、試合の主導権を握る。８分、ゴール正面、７.上澤が下げたボールを12.小山が空いているコースを良く見てグラウンダーのシュートを決め、２－０。この試合、ハットトリックを達成するこの小山もまた存在感を発揮していた元・名古屋の選手。名古屋では出場機会に恵まれなかったが、府中では、Fあるいは名古屋での経験をアドバンテージに、上澤らとともにチームを引っ張る活躍が求められそう。

　小山は13分にも左から中央に切り込んで放ったシュートで３点目。このシュートはコースは良かったものの、ミートし切れず、スピードがなかっただけに、キーパーに押さえて欲しいミドルシュートだった･･･。

　府中は14分、３.森のシュートがディフェンダーに当たりながらもゴールに収まり４－０。歯止めの利かない花巻。その20秒後にも７.上澤に右サイド、ゴールライン際の狭いスペースをドリブルでキープされ、シュートも決められて、５－０。前半で５点のビハインドを負い、試合の大勢は決してしまった。花巻は"先輩らしさ"を見せることのできない前半、府中にFリーグで戦える自信を与える前半だった。

　後半からは花巻も積極的に前からプレスをかけたことで、一方的な展開とはならなかった。

　30分、花巻は７.庄司が裏でボールを受けるも、シュートはブロックされる。10.鳥丸のシュートがポストを叩くなど、花巻がリズムを掴む時間帯も。それでもゴールが奪えない花巻は34分、10.鳥丸がパワープレーの準備に入る。

　残り３分を切って、追加点を奪ったのは府中。ワンツーで14.河原が右サイドを抜け出すと、折り返しを３.森がヒールで流して、６－０。花巻も38分、相手のハンドで得たPKを４.碓井が決めて１点を返したが、得点はこの１ゴール。流れの中からのゴールは奪えなかった。

　府中は39分にもボールを奪った12.小山が冷静にゴールに流して、７－１。Fリーグの先輩・花巻に６点差をつける快勝で、初陣を勝利で飾った。

　「いい試合でした。集中力と、(試合に向けて)取り組む姿勢が良かったので、いい方向に動いた」とは府中のセルジオ監督。「選手を褒めてあげたい」と勝利に笑顔もこぼれた。
　抜群の存在感を発揮した７.上澤は次の名古屋戦に向けて、「名古屋とは、名古屋に居たときから試合をしたいと思っていた」と意気込み、「まだ試合が終わったばかりですが、明日に向けてモチベーションがある」と押さえきれない気持ちを出した。
　３.森は「Fリーグのチームと初対戦だったので、モチベーションを上げやすかった」と説明。「しかし次の名古屋はさらに集中力を上げないと、今日と逆の形になりかねない」と気を引き締めた。
　ハットトリックの小山は「内容はともかく、公式戦で点を取れたことは自信につながります。自信は大事ですから！」と笑顔を見せた。「年齢も下ではない。チームの起爆剤となるような活躍がしたい」府中では求められる役割が大きくなることも、認識済みだ。

　心配なのは一方の花巻だ。

　「準備期間が短かった」(ジオゴ監督)と始まり、「経験の少ない選手が多く、緊張してしまった」と、悪い立ち上がりを振り返る。「後半は良かった」と言ったコメントもあったが、これは前半の内に５点のリードを取った府中がペースダウンしたことも差し引かねばならないハズ。鳥丸キャプテンも「期待と不安があって、不安だった部分が大きくゲームに出た」と振り返る。ただ、「今日の試合があったおかげで収穫があった。どれくらいのプレッシャーで来るのか、コンタクトがあるのか、肌で感じることができた。課題を岩手に持ち帰りたい」というコメントは、筆者としては聞きながら、歯痒さが残った。
　監督・選手に向ける問題ではないかもしれないが、ならば何故準備をもっと早くスタートしなかったのか？プレマッチでFリーグのクラブと対戦を済ませておかなかったのか？２年連続最下位のチームが、開幕を２週間後に迫ったこのオーシャンアリーナカップで、プレッシャーやコンタクトの度合いを初めて掴んでいて良いモノか･･･。
　２シーズンを終了した時点で、他チームに遅れを取っていた花巻が、遅れを取ったままスタートを切った。助っ人ブラジル人の合流など、上積みの要素もある。しかし選手・スタッフ全員で、相当な危機感を持って挑まないと、今年もまた相当厳しいシーズンが花巻を待っていることになるのではないか。