ロドリゴ・ジャパン始動！/フットサル日本代表練習レポート

フットサル日本代表トレーニングキャンプ
2009年６月２日～５日静岡・エコパアリーナ
写真・レポート：橋爪充　協力：今川保（フットデ静岡）

　ミゲルロドリゴ新監督のもと、初招集された日本代表候補。６月２日から４日間、静岡県のエコパアリーナでトレーニングキャンプが行われた。最終日５日の練習は午前９時にスタートした。
　会場に到着してまず驚いたのは、新監督のかたわらにいるコーチだ。今シーズンからＦリーグに新規参戦する府中AFCのセルジオ・ガルジェッリ監督。聞けばロドリゴ監督がイタリアで監督を務めていた時期の盟友だという。今後は臨時コーチとして、代表の活動にも帯同する模様。また監督の通訳には、浦安・シト監督の「口」として活躍した在原正明氏の顔も見えた。小野大輔、初日にひざを痛めた稲田祐介は別メニュー。
　アップ、基礎練習の後に行われたのは、ディフェンスを主なテーマとした、ゴレイロを含む５対５のゲームだった。ロドリゴ監督は高い位置、ハーフラインを少し超えた位置という２段階のラインを定め、局面に応じた異なるプレスを要求する。最初にピッチ上に送り出されたのは、ゴレイロ川原永光、村上哲哉、上澤貴憲、高橋健介、畠山ブルノタカシのセットとゴレイロ村山竜三、稲葉洸太郎、小宮山友祐、木暮賢一郎、北原亘のセットだ。
　「できるだけ高い位置をキープできるように」と監督から声が飛ぶ中、精力的に練習に取り組む選手たち。合宿最終日とあって「体が重い」という声も聞かれる中、良い緊張感でゲームが進む。時間が経つにつれて監督から、フリーズの指示が出る回数が多くなる。選手１人１人の名前はほぼ完全に把握しているようだ。身ぶり手ぶりを交え、体を使ってアグレッシブかつ論理的に説明を加えるのがロドリゴ流か。３つめのセットは岸本武志、山元優典、神敬治、小曽戸允哉。ここに奥田亘が加わる。
　ロドリゴ監督は「プレッシャー」「間合い」という単語をキーワードに、細かく指示を送る。「ある状況が起こった時に、全員がすぐにそれを理解できるようにゲームを止める。チームの初期段階では、メンバーが同じ概念を共有することが大切ですから。すべての局面において、監督に言われたとおりにやるのではなく、メリットを飲み込んで納得した状態で取り組むことが必要になってくる」（初日練習後のコメント）。練習メニューそれ自体は目新しいものではないが、選手たちは監督の発する言葉ひとつひとつに集中して耳を傾ける。局面ごとに「自分で考える」ことを求められている。
　途中からオフェンスに関する指示も飛ぶようになる。「ピヴォが外に開いたら、アラがカットインして勝負しよう」。ブルノや岸本といったあたりが積極的に仕掛ける。監督の指示は常にシンプルだ。ボール保持者へのサポート→前線の選手がスペースを作る→そこにボールを入れる。サイドでボールを持った選手が、前方でフリーの選手にボールを入れなかったシーンでは注意を促す声がかかる。
　今回のキャンプで特に存在感を発揮していたのが高橋健介だ。プレーそれ自体も自信みなぎるものだったが、「監督が求める動きの選択肢を理解しているアドバンテージ」（高橋）があるからか、ポジショニングに迷いがない。ベンチに下がった際には、同じセットの村上や上澤に動き方の説明をするシーンも見られた。
　５対５を約１時間。驚いたのはその後30分以上にわたってセットプレーの練習を行ったことだ。ディフェンス役に上澤、村上、ブルノ、高橋を立たせ、オフェンスの木暮、北原、小宮山（岸本）、稲葉にCKやFKからのパターンを指示する。例えばゴール前にオフェンスの選手が縦に３人並んだ形からの４つのサインプレーへの展開。静岡県フットサル連盟の某指導者も「これは面白い」と感嘆していた。ロドリゴ監督が持つ、点を取るための引き出しの多さを感じた時間だった。
　11時30分ごろに練習終了。２時間半があっという間だった。長年代表に名を連ねる川原は「今はディフェンスの練習が主だけれど、すべてが新鮮。監督は細かいところまで指示してくれるので、自分の仕事が何なのかが明白になった」と話す。代表初選出の奥田も「局面に応じた選択肢の多さを理解するのは難しいけれど楽しい。監督はイエスノーがはっきりしているので分かりやすい」と語った。新しいスペイン人監督のもと、選手たちは一様に手ごたえを感じているようだ。
　新代表の初陣は19日から中国・杭州で行われる招待大会。３日間の日程でホスト国中国、イラン、オランダと対戦する。帯同メンバーは来週トレーニングキャンプを行うU－24代表候補を含めた中からセレクトされる。ロドリゴ・ジャパンに期待がかかる。

川原永光